最近、ミット・ロムニー候補の支持率が軒並み上がっている。オバマ大統領の支持率を凌ぐほどの結果がでているものもあるほどだ
その最大の理由は、副大統領指名である。
8月11日、共和党大統領候補のミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事が副大統領候補にポール・ライアン下院議員を選んだ。ライアン議員は28歳の時に下院議員となり、現在42歳で予算委員会の委員長を勤め、政策通で知られている。
ライアンは、3月、ライアン案と呼ばれる2013年度予算案「Path to Prosperity(繁栄への道)」を発表した際には、ヘリテージ財団でその予算案についての講演を行った。その際には、私がヘリテージ財団に在籍して1年の中で、最も多いテレビカメラが集まっていた。
ライアンは、現在、とりわけ財政均衡を重要視する保守派のホープである。ヘリテージ財団でもライアン下院議員の評判はすこぶる良い。ライアンが講演する際には、ヘリテージ財団のエド・フルナー所長が自らホストをつとめ、とりわけ、Q and Aの時には、まるで父親のような暖かい面持ちで見守っている。
今回の大統領選挙でも出馬を要請する声が多かった。
ミット・ロムニーは、まさに、自分の弱点をカバーする副大統領候補を指名し、現在は、その効果が支持率の世論調査に現われている。
ロムニーの弱点は特に2つが知られている。1つはオバマ大統領に比べて民衆を魅了する力、つまり華がないことである。そして2つ目は、共和党の固定票のコア層からの信頼を勝ち得ていなかったことである。
この弱点をカバーするのが、まさにポール・ライアン下院議員だった。予算削減を理路整然と訴える力を持つライアンは、共和党保守派にとってスターである。共和党保守派は、マサチューセッツ州知事時代にオバマケアの原型を導入したとして、ロムニーの考え方に懸念を抱いていた保守層が、ライアンには懸念を持っていないどころか最高の好感度を示している。
そして、若さと知性とそしてルッキングも兼ね備える。ライアンが選挙に参加するようになってから、共和党の動員に勢いがでている。
42歳は、オバマ大統領よりも断然若い。世代論で見ると、ライアンは初めてのジェネレーションX世代である。ちなみに、2008年の大統領選挙の行方を決めオバマ大統領を誕生させたのは、M世代であると知られている。X世代は1965年から1985年前後に生まれた世代であり、M世代はそれ以後、生まれた世代、つまりレディ・ガガと同世代かそれよりも若い世代である。
しかも、ライアンはコアの保守層に受けが良いだけではなく、カソリック信者であるため、通常、民主党寄りとされるマイノリティからの票も期待できる。
さらに、ライアンは大統領選挙の勝敗を決めると言われるバトル・ステートの1つウィスコンシン州出身だ。
ライアンの登場で盛り下がっていた大統領選挙が急に華やいできた。
しかも、ロムニーとライアンが並ぶ姿は、絵になる。両者とも、アメリカ人にとっては誰もが認める知性ハンサムだ。この二人の仲間になりたい、と思う人は多いだろう。
私は、政治にも「スマップ効果」、つまりグループになることで人気の相乗効果ががでると思っている。
かっこいい一匹狼のそばに行くのは難しいが、楽しそうで素敵なグループには近づきたいと思うものだ。来週の月曜日からは、共和党の全国党大会がタンパで行われる。ロムニー候補の演説は、最大注目であるが、ライアンの演説に対する聴衆の反応を見ると、9月から本格化する本選挙の行方が見えてくるように思われる。
8月27日から30日までタンパで行われる共和党の全国大会に潜入します。予備選挙同様に、無料電話会議を行います。詳しい日程・時間、そして電話番号とパスワードは、後ほど、アシスタントの舟橋がメールします。ぜひ、ご参加ください。
編集後記
ポール・ライアンは、2018年大統領領選挙の結果にかかわらず、今後注目を集めざるを得ない。
なぜなら、ライアンが副大統領候補になったことは、将来、大統領選挙に出馬することを宣言したようなものだからだ。
最近の大統領選挙はさらにおカネがかかり、マネージメント能力もさらに必要となる。何百億ドル資金調達し、それを効果的に使うために数百人雇用する。しかもボランティアの利用と、演説会への大掛かりの動員も必須能力になっている。候補者には、大演説会場の人々を魅了し、しかもYoutubeで何度も見られることに耐えられる内容と話し方がますます必須になっている。
そのため、大統領候補の指名を獲得するためには、前もっての予行練習が不可欠になってきた言われている。
ライアンは、まさに、この選挙で大統領選挙の真髄を学ぶことになる。
アメリカの大統領選挙は、有権者が投票を決める「教育」要素に加えて、大統領候補が大統領になっていく「教育過程」でもある。
お金のかかりすぎは問題であるとしても、この候補者にとっても有権者にとっても「教育」という概念が日本の選挙には欠けているように思えてならない。