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Japanese Newsletter #51

July 26, 2012

July 26, 2012 | Japanese Newsletter on

おとり作戦がスキャンダルに発展? 

「Fast and Furious」といえば、邦題では「ワイルド・スピード」で知られているストリート・カーレース映画のタイトルだが、アメリカでは、最近、別の事件で注目を集めている。それは「Operation Fast and Furious」という銃規制に関する作戦名である。2009年に始まったこの作戦は、2010年12月国境警備隊員が殺害されたことがきっかけで「事件」ととなった。

Operation Fast and Furiousは、米国司法省のアルコールたばこ火器爆発物取締局(ATF)が主導したProject Gunrunner(gunrunnerは銃の密輸業者の意味)の一環として始まった。このプロジェクトは、メキシコの麻薬組織がアメリカの銃を手に入れないようにすることを目的としている。

ちなみに「Fast and Furious」とうい名前がついているのは、映画に出てくる自動車整備工場が密輸組織のアジトとなっていることが多いからだという。 

「Fast and Furious」はおとり作戦のようなものである。つまり、メキシコと国境を持つアリゾナ州で危ない人に銃を売ることを規制するのではなく、銃を売ってその後を追って、銃の最終使用者の場所を突き止め麻薬組織を摘発する、という作戦である。

おとり捜査のように販売された銃はCBSニュースによると2000丁以上という。しかもメキシコ政府によると、アメリカとメキシコではこの作戦で販売された銃で、殺傷事件が300件以上起きている、という。

2010年12月14日に国境警備隊のブライアン・テリーが、メキシコとの国境から10マイルの場所で撃たれ死亡した。また2011年2月15日には、移民税関捜査局の捜査員がメキシコで殺害された。テリーの事件では近くでAK-47ライフルが見つかっており、製造番号などからFast and Furiousの一環で密輸業者に販売されたものだということが確認されている。

これらの事件を受けて米議会は調査を開始し、2011年1月27日付けで共和党のグラスリー上院議員(アイオワ州選出)がATFのケン・メルソン事務局長代行へ情報提供の要求を行った。

ATFは、翌月、ATFの関与を否定した。一方で、メルソン事務局長代行はグラスリー議員、ATFや司法省の上層部が隠蔽しようとしていることを告発した。彼も含め、何人もの関連職員が内部告発に対する報復として、転勤などの措置にあっている。

2011年11月、ようやくエリック・ホールダー司法長官がFast and Furiousによってアメリカからメキシコへ銃が流出したこと正式に認め、翌月には、司法省が議会へATFが関与を否定した声明を撤回したことを伝えた。

下院監視・政府改革委員会のダレル・アイサ委員長は、司法省に対して数々の質問状を提出した。だが、司法省は一部の情報提供を拒み、しかもオバマ大統領はホールダー長官の要請を受けて、情報提供を拒否する大統領特権を発動した。

ヘリテージ財団では7月25日、司法省の監視の下、ATFがFast and Furious 作戦をどのように行ったかを詳細に記した「Fast and Furious: Barack Obama’s Bloodiest Scandal and Its Shameless Cover-Up」の著者を招いて、フォーラムを行った。

著者のケイティー・パブリッチは、ウォーターゲート事件との比較も踏まえて、この事件を解説した。パブリッチは「この事件は人命に絡んでいるのでとても重大だ」と語っていた。

アメリカでは1971年6月にニクソン大統領が「麻薬との戦い(War on Drugs)」を正式に宣言して依頼、麻薬組織との果てしない戦いが続いている。

オバマ大統領にとっては、今年の大統領選挙前に沸いたスキャンダルだ。今後の事件の展開が気になるところである。


キャピトルの丘

ワシントニアンの特徴の1つは、ワークアウト(運動)好きであることは広く知られている。

ワシントンに建つほとんどのビルには、ワークアウトができるジムとシャワー室が作られている。

そこで、なんともワシントンらしいニュースを紹介しよう。

スパイで有名なCIAのジムを巡る戦いである。なんと、スマートに情報を集めるCIA職員用のジムは狭くそして老朽化が進んでいるという。CIAのジムで何人が運動できるかという情報はセキュリティ情報にあたるので、公開はされていないというが、CIA本部にあるジムは2ベッドルームのサイズで2台のジョギングマシーンとウェイトやマットがあるレベルという。

最近、特に健康志向でジム好きが多いワシントンにあって、CIAの状況は悲惨なものだという。

CIAに国防総省から移動する役人はその悲惨さに驚きを隠せないという。とりわけCIAは国防総省までは行かないとしてもストレスを抱える組織である。ビンラディン暗殺はCIAの指揮で行われている。

ヘリテージ財団の地下にも、ジムはある。ウェイトに加えて、ジョギングマシーンなどの有酸素運動マシーンが7,8台並んでいる。もちろん、シャワーも複数完備するロッカーもある。しかも、コインランドリーまで併設されている。

だが、CIAの悩みは続く。現在、予算削減が叫ばれる中で、他の省庁に比べても、民間の建物に比べても悲惨とはいっても、予算請求は難しいからだ。

この記事を読むと、予算に問題はあるが、CIAにも普通のレベルのジムがあったほうがいい、という気持ちになる。これは、かなり日本とは異なる感覚だろう。アメリカではジムに限らず、無料テニスコートも無料バスケットコートにサッカー場、野球場がいたるところにある。スポーツが仕事と生活の一部に組み込まれている。

日本では、国会の中にジムはあるが、通常の建物に社員向けのジムが併設されているところは少ない。「スポーツ施設なんて贅沢」という思想が根底にあるように思われる。

アメリカは肥満に悩む一面もあるが、ワシントンDCで働くエリートたちは運動も効率よく仕事をするために必要なものと考えられている。

私も、本を書いていてつまったとき、水泳などの有酸素運動をすると、すっとそのつまりが取れるアイディアが浮かんでくる。

日本のビルにも、テナント用ジムが併設されるようになれば、仕事の効率も上がるし、生活習慣病の減少につながる、なんてことにならないだろうか。

About the Author

Kumi Yokoe, Ph.D. Senior Visiting Fellow, Japan
Asian Studies Center