The Heritage Foundation

Japanese Newsletter #49

July 12, 2012

July 12, 2012 | Japanese Newsletter on

フルナー所長にシンクタンクの新時代について聞く            

ワシントンDCのシンクタンクのトップが相次いで入れ替わっている。去年から、ランド研究所、ピーターソン国際経済研究所、新アメリカ安全保障センター(CNAS)、アジア・ソサイエティー、アメリカ進歩研究センターといったシンクタンクのトップが交代している。

2年前に遡れば、American Enterprise Institute(AEI)がトップを交代している。

またごく最近では、ケイトー研究所の創業者で所長であるエドワード・クレインが事実上解任された。

そういうヘリテージ財団の創業者&所長であるエドウィン・フルナーも来年の3月で所長を引退する予定である。

40年間近くシンクタンクのトップをつとめシンクタンクの生き字引とも言えるフルナー所長にシンクタンクの現在と未来についてインタビューをした。

横江:フルナー所長も所長から引退されると伺いました。この次期に多くのシンクタンクの所長が交代しています。何か理由はあるのでしょうか?

フルナー:一斉に変わっていますが、ただの偶然です。どんな組織でもリーダーの交代はあるもので、私の場合もう70歳になりますし、もう35年もこの職にいます。そろそろ新しいリーダーが来てもいい頃でしょう。

他のシンクタンクの所長を見ると、確かに私と同年代は多いですが、早めに引退する人もいれば政府や他のキャリアにチャレンジする人もいます。昨今の所長の交代はたまたま重なっただけで、特別な理由はありません。

横江:オバマ政権誕生もその一環とも言えるかもしれませんが、ここ5年、10年でアメリカの社会が変わってきている、という見方があります。社会変化に関係はないのですね。

フルナー:そうは思いません。私は、ヘリテージ財団で重要視してきたことは、時代に密着し、そして時代を先取りしようとしてきました。ソーシャルメディアやブロガーなど新しい手法をいち早く取り入れてきました。時代を先取りする努力をしてきましたが、私の引退は、時代の変化というよりは年齢を考えて区切りをつけようと思っています。

横江:ワシントンのシンクタンクのトップの多くが偶然といえども足並みを揃えるように代わることは、アメリカ政治になんらかの影響を与えるのでしょうか?

フルナー:組織が人材と成果をもって強固な地盤を築いているのであれば、トップが交代しても、政権や議会との関係に変化はありません。アメリカ進歩研究センターは、とてもスムーズな交代でした。AEIは新しい所長を迎えて2年半になると思いますが、その交代はとても円滑でした。シンクタンクのトップの交代は、企業の経営者の交代と同じで頻繁にあるものです。

横江:フルナー所長が辞められると創業者で現役はほとんどいなくなりますね。シンクタンク界にも創設者所長がいなくなることは、政治におけるシンクタンクの役割を変えますか?

フルナー:それは、組織の文化に関係することで、とても面白い質問ですね。ヘリテージ財団はともてユニークな文化を持っています。チーム・リーダーシップと呼んでいますが、複数の副所長と複数の中級幹部がそれぞれのチームを束ねて運営しています。現在までに、それを強固なものにしてきました。だから新所長もそれを変化させることはないでしょう。新所長は評議委員会が最終的に決めますが、選考過程で強調されていることはヘリテージは1つの強固な組織であるということです。組織を変える必要はなく、この強固な組織にの上に新しい物を築いていけばよいのです。これはヘリテージに限ったことではありません。

横江:新所長というのは、どこのシンクタンクでも支援者との関係は弱くなると思われますが、新しいリーダーにはどういうリスクや課題があるのでしょうか。

フルナー:ヘリテージ財団の場合は、私が非常勤の顧問としてしばらくとどまりますので、そういう心配はありません。議員や寄付者との関係を維持していきます。私は「大使」のような役目を負うことになります。日々の経営にも協力しますが、介入はしません。

横江:次に過去30年におけるシンクタンクの役割について伺います。フルナー所長の在任中にシンクタンクの役割が変わったことなどありますか?

フルナー:ワシントンの議員はもっと証拠、つまりは数字を欲しがるようになりました。そこで1990年後半データー分析センターを作りました。ヘリテージでは毎年、各国の経済自由度指数を発表するようになりました。実際の数字を含めることで、正確になります。数字に基づいたゆるぎない証拠を政治家やマスコミは求めるようになってきました。

横江:それは民主主義の熟成によるものですか。もしくは、電子政府に代表されるように、インターネットで政府の情報が増えたからですか?

フルナー:インターネットによる部分が大きいでしょう。他方で政府債務や政府支出が恐るべき額に上っているという側面もあります。先日ラジオ番組に出演したのですが、DJがどうやって巨額な数字を概念化するか説明してくれました。「人間の髪の毛をフットボール場に並べたときの数が100万本になる。10億本となると、およそ100キロメートルになる。1兆本になると10万キロメートルになる。」それを考えると私たちが取り扱っている数字の大きさがわかります。政治家がそういった数字を扱うとき、膨大な額の富がその数字を構成しているのだと説明できる専門家が必要です。ここが私たちの差別化ポイントです。そして、どのようにして政府の規模を制御するかという私たちのプロジェクトに回帰します。

横江:ここ10年、20年の間にシンクタンクは政策立案、政策調査よりも政治への影響力へ重心がシフトしているのではないかと言われていますが、どう思われますか。

フルナー:ヘリテージ財団は、政治への影響力に重きをおいています。1980年代にエコノミストで、ヘリテージ財団がハーバード大やイェール大に代わる新しいアイデアの源だと書かれたことがありました。また、最近ニューヨーク・タイムズは、ヘリテージを保守派のメトロポリスにおけるパルテノン神殿だと呼びました。私たちの政治に関する影響は尽きることはありません。しかし、今日、競争が激化していることは否定できません。様々なロビー団体やシンクタンクが存在していますが、何れも数字を使って解決策を打ち出しています。データの信憑性には常に相当の注意を払わなければなりません。

横江:競争があるというのはシンクタンクにとって良いことですね?

フルナー:当然です。ただし、受け取る側からすると面倒が多くなったとも言えるでしょう。一つの問題に関して、様々な所から異なる見解や解決案が出てくるのですから。そのため、シンクタンク間の協力も増えてきました。ヘリテージ財団は、意見の異なることが多いブルッキングス研究所などのシンクタンクとも政策研究の協力をしています。例えば、政府給付金制度について少なくとも将来の課題の大きさに賛同できるのであれば、解決案を練るのに協力できます。

横江:最後に、オバマケアについての最高裁の決定をどう思いますか。

フルナー:あの結果には驚きましたね。愉快ではありません。私は、ロバーツ主席判事は、最終的な決定を国民の手に委ねたと思っています。つまり11月6日の選挙で決まるということです。

横江;大統領選挙がますます大事になったわけですね。ありがとうございました。


インタビューを終えて

ヘリテージ財団の創設者であるフルナー所長が来年、引退するとの記事を見て、驚いたが、インタビューで大使のような役割で残ると聞き安心した。

インタビューでは、女性所長の可能性についても聞いてみた。ヘリテージ財団のリベラル版で2003年に創設されたアメリカ進歩研究センターは昨年11月に、創設所長のジョン・ポデスタが早々に引退し、ニーラ・タンデンという女性所長に交替した。

フルナー所長は、タンデンの実力と影響力を認めた上で、カーネギー国際平和基金に女性所長がいたこと、そして、フルナー所長の母校のペンシルバニア大学にも女性学長いたことに触れた。

そして、ヘリテージ財団の新所長の候補者には、女性が入っていることも明かした。

ヘリテージ財団でも女性の候補者がいると思うと、嬉しかった。

各シンクタンクは所長選びに2,3年かけると言われている。ヘリテージ財団でも2年の月日をかける計算になる。フルナー所長によると1年半前から始まり今年の12月に後任所長が発表されるという。3ヶ月の引継ぎ後、2013年4月には新所長が就任する。

インタビューでフルナー所長が答えたように、フルナー所長は、その後しばらくは顧問として残ることになる。トップの変更はそこで働く者にとっては不安もあるが、フルナー所長が顧問としてとどまるとインタビューで答えたときは、ほっとした。

それも、かなり長期にわたってフルナー所長は顧問にとどまるようだ。何度も所長が交代してきたAEIよりも、引継ぎには時間がかかるだろう、と語ったからだ。

ヘリテージ財団には、設立当初から続く短くまとめたバックグラウンダーというレポートがある。忙しい議員でも簡単に読めるようにコンパクトにまとまったレポートである。

当初は議会に焦点を置いたへシンクタンクはヘリテージ財団に限られてが、今では他のシンクタンクも議会に目を向けるようになり、バックグラウンダーのような配布物も作っていると言ったとき、茶目っ気いっぱいの笑顔を見せた。

About the Author

Kumi Yokoe, Ph.D. Senior Visiting Fellow, Japan
Asian Studies Center