The Heritage Foundation

Japanese Newsletter #30

March 1, 2012

March 1, 2012 | Japanese Newsletter on

ロムニー、ミシガン州で踏ん張った            

2月28日夜、ミシガン州でのミット・ロムニーの勝利が確実になった時、ロムニーの支持者は胸をなでおろした。

ロムニー元マサチューセッツ州知事は、清々しい笑顔で、デトロイトから車で1時間ほどのNOVIで勝利宣言を行った。

余程、嬉しかったのだろう。ロムニーは、演説が終わった後も、会場に集まった支持者一人一人と握手をしていた。

アメリカの大統領選挙では、候補者の周りをガードマンが囲み、それほど簡単には近づけない。実は、握手となるとかなり敷居が高い。一人1000ドルの資金集めパーティでは候補者と2ショット写真と握手がついていることが一般的だが、通常の遊説となると、前の列の人が握手できる時があるかないかの程度である。

一方、サントラムは、敗北宣言以後、握手することもなく会場を後にしていた。

ミシガン州は、ロムニーの生まれ故郷である。日本人の駐在も多く比較的裕福な人が多いNOVI地区で、ロムニーは生まれ育った。父親は、ミシガン州で3回も州知事を務めた。遊説会場で支援者にインタビューしたところ「お父さんは今までで最高の州知事」という声が多く聞かれた。「小学2年生の時、火曜日の朝50分が有権者教育の時間になったの。この時、実際に政治に参加する意義と方法を学んだわ。あの教育がなかったら政治的無知だったと思うわ」という具体的な声もあったほどだ。

2008年大統領選挙の予備選挙でも、ミシガン州の予備選挙では、共和党の候補者になったジョン・マケイン候補を圧倒していた。

ミシガン州は、ロムニー勝利と誰もが思っていたが、リック・サントラム元上院議員がコロラド州、ミズーリ州、ミネソタ州でまさかの3勝をあげた時から、ミシガン州の潮目が変わってきた。ミシガン州の世論調査でサントラムが追いつき追い抜かしてきたのである。

そのため、2月28日が近付くにつれ、ロムニーとサントラムの選挙戦は熾烈になり、全米のマスコミはミシガン州に集結した。 

圧倒的に優位と思われてきたロムニーにとってはミシガンを落とすと、実質的にはフロントランナーの地位から転落することになる。そのため、大手メディアは「ミシガン州を落とすとロムニー陣営はパニックになる」と書いていた。ミシガン州は、ロムニーにとっては、意地でも落とすことができない州になった。 

一方、サントラムにとっては、このミシガン州で勝利すれば、代表委員の数ではロムニーに及ばないが、実質的フロントランナーの地位を手にすることになる。ここで勝利すれば、「勝てる候補者」として弾みがつく。長期に及び選挙に必要な資金も容易に手に入るようになる。

そのため、遊説では各候補者は相手候補を堂々と非難し、テレビをつければ、お互いの過去の言動と行動を批判するテレビコマーシャルが途切れなく流れていた。

結局、ロムニーは3%という僅差ではあるが、ミシガン州で勝利し、トップランナーとしての地位を守ったことになる。マスコミは、ロムニーは二つ目の試練を超えた、と表現していた。ちなみに一つ目の試練は、フロリダ州での勝利だった。アイオワ州をサントラムに、サウス・キャロライナ州をニュート・ギングリッチ元下院議長に勝利され、トップランナーとしての地位を守るためには、フロリダ州予備選挙の勝利が必要だったからだ。

なぜ、ロムニーは、これほどまでに試練が多いのか。つまり、なぜ共和党は、ロムニーで一本化することが容易ではないのか。

その理由は、ソーシャル・コンサバティブにある。

サントラムの台頭もギングリッチが踏みとどまるのも、ロムニーがソーシャル・コンサバティブの票をまとめらないことにある。

ソーシャル・コンサバティブの典型は、中絶の健康保険適用に絶対的態度で反対するグループである。通常、キリスト教的価値が、この考えの背景に存在する。

ロムニーは前述したように、全米で3%しかいないモルモン教の信者であり、しかもマサチューセッツ州知事時代、女性の権利として、健康保険の中絶適用に賛成していた。

共和党の支持母体の一つは、キリスト教的価値を大事にするソーシャル・コンサバティブである。このグループはロムニーにアレルギー反応を示し、サントラム支持に回っている。

サントラムは、共和党のキリスト教グループから公式に支持を受けている。サントラムの遊説会場では、「アーメン」という言葉がよく聞かれる。ミシガン州の首都ランシングで行われた遊説でも、会場のあつこちから「アーメン」という声が聞こえていた。

サントラムは、20歳から3歳の7人の子供がいる。本当はもう一人、子供がいるはずだったが、死産した。この時の決断はサントラムが真のソーシャル・コンサバティブであるということの逸話になっている。医者が「母体を守るためにお腹の子供を中絶するかない」とサントラムに言ったとき、サントラムは「イエス」と言えなかったという。妊娠中絶は、宗教的に絶対に許されるものではない、と信じているからだ。結局、お腹の子供は、中絶しなかったが、死産になった。

一方、サントラムが今一歩、ミシガン州で伸びきらなかった理由も宗教と言われている。先週末、サントラムは、唯一のプロテスタント以外の大統領、カソリックのジョン・ケネディ大統領の歴史的演説を批判した。

ケネディは、当時カソリック大統領が生まれることへの恐れを消すための演説を行い、信仰と国家経営は異なる、と明言し、それが功を奏したと言われている。

だが、キリスト教的価値を政策に反映するサントラムは、このケネディ演説には吐き気を催すと語った。

そのため、サントラムはカソリックの票を固めることはできず、ロムニー候補にカソリック票の優位をゆずった。

ミシガン州はフォードが自動車を生産し20世紀産業の中心であると同時に労働者の都になった。そのため、労働者が支持する民主党のイメージが強いが、実は宗教的価値を大事にする人が多い土地でもある。プロテスタントが50%以上、カソリックが25%を占める。デトロイトの町はアフリカ系アメリカ人が多いが、州では70%以上が白人である。

サントラムは、全米に広がるこの宗教的価値を重要視するクリスチャン票をまとめようとしている。

ロムニーは、ミシガン州で勝利したが、ソーシャル・コンサバティブとサントラムの共同戦線に勝負をつけられたわけではない。

ロムニーはフロントランナーの土俵にのこったが、ロムニーとソーシャル・コンサバティブとの戦いは、候補者指名の結果が判明するまで続くだろう。



編集後記 @デトロイト 

日本では、ソーシャル・コンサバティブという概念は馴染みがない。しかし、大統領選挙、とりわけ共和党の予備選挙では、ソーシャル・コンサバティブ票が鍵になる。

ロナルド・レーガン大統領以来、歴代の共和党の大統領は、「価値」に重きを置く、このグループの票を確実にまとめていた。ボブ・ドールもジョン・マケインもこの票をまとめることに苦戦し、結局は大統領選挙に敗れている。

火曜日の夜のテレカンファレンスでは「共和党は、劣勢の大統領選挙ではソーシャル・コンサバティブの声が大きくなるのではないか」という質問をいただいた。

宗教事情が異なる日本にとっては、馴染みがないだけに、ソーシャル・コンサバティブとは何かについて深めたいと思っている。

というわけで、来週のスーパー・チューズデーは、ソーシャル・コンサバティブのメッカである南部のテネシー州に入って現場調査を敢行します。

現在、ソーシャル・コンサバティブが強い南部テネシー州とオクラホマ州、そしてミシガン州と同じく北西部でソーシャル・コンサバティブが多いオハイオ州の世論調査では、押しなべてサントラムが優勢である。

ロムニー陣営のインサイダーは「この3つの州、とりわけ南部で一つでも勝てば楽になる。」と明かした。

この3州のうち1つでも勝利すれば、ロムニーは3つ目の試練を超えたことになる。3つ目の試練に失敗すれば、スーパー・チューズデー以後も共和党の予備選挙は、熾烈に続く。

About the Author

Kumi Yokoe, Ph.D. Senior Visiting Fellow, Japan
Asian Studies Center