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Japanese Newsletter #60

October 25, 2012

ディベートは2度勝て

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2012年大統領選挙の現在の特徴を一言で表すとしたら、「テレビ討論会」だろう。

 

10月3日に第一回大統領候補の討論会が行われてから、潮目は変わり、まさに互角に争いに突入している。勝者が決まったつまらない選挙から、耳目が注目する選挙に様変わりした。

 

何度も書いていることだが、1年以上も続く大統領選挙には、有権者が大統領を選ぶという機能に加えて、候補者が大統領に育っていく機能もある。

テレビ討論会は、まさに大統領の資質を有権者に証明すると同時に、討論会を勝ち抜く十分な準備が重要となる。

 

3回のテレビ討論会を通して、共和党のミット・ロムニーは大統領の資質があることを証明した。ロムニーにとって共和党の大統領候補になるまでの道のりは、決して平坦ではなかった。アメリカ史上初のモルモン教の候補者である。

2008年の予備選挙でも2012年の予備選挙でも、ロムニーは演説も討論会も決して得意ではなかった。オバマ大統領のように話術で人を引きつけるタイプではなかった。

 

まさに、ロムニーの執念がオバマ大統領に一撃を与えている。

今回のテレビ討論会は、今まで以上に候補者に政策の知識があるかどうかを問うフォーマットになっている。1つのテーマについて15分を両者2分ずつ行き交うフォーマットは、知識と瞬発力が要求される。

 

現在のところ、「討論会の出来」についての世論調査は、オバマ大統領2勝、ロムニー1勝だ。そして、「討論会以後」の世論調査はロムニーに歩があるようだ。

今回のテレビ討論会では、討論会直後よりも、討論会後の世論調査がより重要になっているという特徴がある。

 

というのも、今回の選挙では「ファクト・チェック(事実確認)」という機能が注目を集めている。

 

今までの討論会であったら、討論会の発言の正誤について議論されることはほとんどなかった。だが、今回の選挙では、討論会が終わるとすぐさま、各候補者の発言について、マスコミや識者がファクトをチェックする。

 

例えば、今週の火曜日に行われた国際問題についてのテレビ討論会で、オバマ大統領は「予算の包括的削減(sequestration)は私ではなく、議会が発案したものだ。でもそれは起きない」と発言した。それに対して、Politicoは、翌日、「Bob Woodward: Obama 'mistaken' on sequester 予算の自動削減についてのオバマ大統領発言は間違いだ」という記事を掲載した。

 

実際は、予算の議論がされていた当時、ホワイトハウスの行政予算管理局長だったジャック・ルー(現大統領首席補佐官)と立法問題を担当していたロブ・ネイバーズが、上院院内総務のハリー・リード議員を通じて提案したのだという。

 

2回目と3回目のテレビ討論会の出来についての世論調査はオバマ大統領が先行したが、発言のファクト・チェック後は、オバマ大統領一人勝ちと言う状況にはなっていない。各世論調査は、テレビ討論会が行われる前には想像がつかなかったほど拮抗し、ロムニーは世論調査の数値を落としてはいない。

 

また、第3回のテレビ討論会でTwitterなどのSNSが最大限に盛り上がったのは、「馬と銃剣」について議論されたときだった。ロムニーが海軍の艦船数が1917年の頃より少ないと批判したのに対し、オバマは「1916年より少ないというけど、馬と銃剣も減っている。軍備は時代にあわせて変化する」と発言した。

この時、Twitter106,000回、「馬と銃剣」についてのGoogle検索が7215%と跳ね上がっていた。

 

もはや、テレビ討論会は空気で流れるものではなく、ファクト・チェックされデータとして残るようになった。

 

候補者にとって、これからのテレビ討論会は、ディベート中とディベート後の2度勝たなければならない。



キャピトルの丘

今回のテレビ討論会は、感じ入るところが多い。前述したファクト・チェックの機能は、テレビ討論会の質を向上させることは疑いがない。同時に、ネットで気軽に検索できる環境は、有権者の視点も向上させる。

 

ファクト・チェックや討論会の様子が、終了後すぐにネットで全て見られる状況を見ると、インターネット革命はまさに政治・選挙にも革命をもたらしている、と言えるだろう。日本の政治にこのファクト・チェックとデータ蓄積の環境ができることを望んでやまない。

 

さらに、もうひとつ10月22日のテレビ討論会で感じたこと。

「それについては賛成だ」だという発言である。オバマ大統領は「あなたはこれについては賛成してる、と発言していますね」と語り、ロムニーも「それについては賛成している」という発言を複数回耳にした。

違いが勝敗を決める選挙では、相手に「賛成している」と討論会で発言することはかなり勇気がいることのように思われる。とりわけ、ロムニーは均衡しているとはいえ、後ろ姿を追う立場である。

 

国内問題を議論するときには「賛成」と言う意味合いはなかった。だが、今週の国際問題の討論会では「賛成」がよく聞かれた。

 

まさに、国際問題については不毛に違いを際立たせることは国益にはならない、ということをアメリカの政治家は知っている、と感心してしまった。

 

とりわけ、2009年の日米の不協和音は、与党になったそれまでの野党が違いを際立たせるためにいたずらに国際政策の立場を変えたことであることはよく知られている。

 

「それについては賛成している」と国のトップを決める選挙で候補者が言えることは、その国の政治が成熟していることを表していると思えてならない。

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