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Japanese Newsletter

February 7, 2013

February 7, 2013 | Japanese Newsletter on

移民法が熱い

最近のワシントンでは、 「移民」をめぐる議論が活発化している。

オバマ大統領は、二期目の就任式の演説で「移民政策」に力をいれると宣言した。ホワイトハウスは近々、移民に関する包括案を発表すると見られている。

オバマ大統領は、第一期オバマ政権で「ドリーム法」を通過させ、アメリカで育った不法移民の子供がアメリカの市民権を得られやすくした。第二期オバマ政権では、この権利を、不法移民にも拡大しようとしている。

アメリカは現在、毎年40万のビザを発給しているが、オバマ大統領が提出する包括案がとおると、約30倍の1,100万人の不法移民が恩赦で市民権を得るかまたは一時的な労働許可を得ることができるという。

ここ20年、アメリカではヒスパニック移民が驚異的に伸びている。1990年代は、10%にも届かずアフリカ系アメリカ人よりも少なかったが、現在は、アフリカ系12%に対してヒスパニック16%にまで増えている。

つまり、選挙での影響力を拡大している。

そのため、選挙のたびに、不法移民に対してある程度の恩赦が行われてきたが、1100万人という数を見てのとおり、オバマ大統領の場合は破格である。しかも、一時的な恩赦ではなく法律にしようとしている。

増え続けるヒスパニック移民を前にして、共和党の議員も口を揃えて移民法の改正を賛同するように、移民法の改正は、必要なこととして考えられている。

共和党支持が多いクリスチャン・グループも、最近になって移民法の改正への声を強めている。

 

クリスチャン・グループが多い南部には、ヒスパニック移民の数が多い。しかも、ヒスパニックは厳格なクリスチャンであり、クリスチャン・グループが大事にする家族観が似ている。クリスチャン・グループは、不法移民といえども、家族が離れ離れになってはいけない、と主張するようになった。

時代は変化している。

オバマ大統領は、2月12日の一般教書演説にも移民法の緩和を盛り込むと見られている。

一方、共和党は、不法移民が市民になることへの「門戸開放」を警鐘をならしている。ポリティコによると、共和党の下院は、労働許可は認めるが、容易な市民権の拡大には反対すると言う立場で協調するという。

現在のオバマ政権下では、市民が「政府にただ乗り」できる制度が確実に積み重ねられているという。

その際たるものはオバマケアである。保険に入ることができない人は、政府の資金でどんな病院でも無料で治療をうけられる。これは、きちんと保険に入っている人に比べて、格段に優遇されている。例えば、私はヘリテージ財団が契約する保険に加入するが月々数百ドル支払った上で、保険会社と契約する病院では1回25ドルで治療を受けられるが、それ以外の病院にいくと割高で支払うことになる。歯の治療にいたっては年間の上限が決まっている。その上限では、年間に虫歯を二本治療できない。もし仮に1100万人の不法移民が市民権を得ると、そのうちの少なくない人がオバマ・ケアの対象になる。

 

2つ目は教育である。オバマ政権下では、教育ローンが20年変換できない場合は、教育ローンを帳消しにするという法律ができている。

 

金融関係者によると、住宅ローンに関しても、返せない人には帳消しにする制度ができつつあるという。

 

まさしく、不法移民に市民権獲得の道を容易にすることは、それだけ、政府の費用が圧倒的に嵩むことになる。

司法委員会のボブ・グッドラッテ委員長(共和党)は、「包括案には賛成できないが、1つづつ吟味して移民法を改正したい」と語っている。

移民法は,労働市場だけではなく、予算に直結するだけに、今後、どんな展開があるのか目が話せない。

キャピトルの丘

移民法の改正は、将来のアメリカの人口統計に直結する。現在、不法移民のほとんどがメキシコやキューバといったヒスパニックであること考えると、アメリカはもはやヨーロッパ出身の白人クリスチャンが多数派の国ではなくなっていく。

すでにアメリカで生まれた子供をみると、2011年以降は、ヒスパニックを含まない白人は、アメリカの多数派ではなくなった。

スペイン語の普及率も圧倒的に増えていくだろう。今でも、子供の世話をするナニーにはヒスパニックが多く、簡単なスペイン語ができる子供は増えているという。

オバマ大統領は、女性、ヒスパニック、同性愛といったマイノリティに優しい政策で選挙を制したが、この方針が続けば、アメリカの予算は崩壊することになる。1100万人といえば、ほぼ日本の人口の1割である。

ここに野党の共和党は危機感を募らせている。

ヘリテージ財団のエド・フルナー所長は、オバマ大統領の取り組みをアメリカを崩壊させる「オバマ革命」と呼び危機感を露わにしている。クリントン大統領は人気はあったが、どちらかというと共和党のアイディアを横取りしていたので、クリントン革命とは呼ばれていない。以前では、冷戦を崩壊させたレーガン大統領は「レーガン革命」と言われる。

オバマ大統領は約8000億ドルという経済回復予算を使って、一時ではなく制度的に税金が「ばらまかれるしくみ」を作り、新しい人口分布のアメリカに取り入ろうとしていると懸念を募らせる。先に述べた、どちらかというとマイノリティ救済につながるオバマ・ケア、教育ローン、住宅ローンが最たる例である。

現在、共和党はオバマ大統領が作り上げた仕組みがアメリカを破綻させる前に、政権を奪還したいと思っている。まさに二大政党制なのだが、新しい人口分布の中で、オバマ大統領のもたらした仕組みのゆがみを是正するための党再建にあたっている。

マルク・ルビオ上院議員やジェブ・ブッシュ元フロリダ知事が率先して移民法の緩和に声をあげている。共和党はヒスパニックが増える続けるアメリカにアジャストしようとする努力が始っている。

移民法は、オバマ大統領主導で議論が始ったばかりであるため、共和党内では合意を得ていないが、様々な声が上がるのは、まさに再生への第一歩である。議論が出尽くしたところで合意に至るという正当な手順を踏んでいると言え得よう。

日本で二大政党制が定着するには、野党に問題を受け止めて、議論し、党内合意に至っていく正統なプロセスが必要になる。移民法にかかわる共和党の議論は、日本も二大政党制が定着するために野に下った政党がするべき議論のお手本に思われてならない。

About the Author

Kumi Yokoe, Ph.D. Senior Visiting Fellow, Japan
Asian Studies Center