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Japanese Newsletter #56

September 13, 2012

September 13, 2012 | Japanese Newsletter on

2つの党大会に行ってきました

9月の上旬に行われた民主党の全国党大会の大統領候補指名受諾演説で、オバマ大統領は、「私がやってきたことか、それとも共和党か、あなたが選択する選挙だ」と繰り返し、共和党との対決色を浮き彫りにした。

 

一方の共和党も8月下旬に行われた全国党大会で、オバマ大統領が導入した国民皆保険にあたるオバマケアと60兆円に及ぶ景気刺激策の効果を批判し、対決色を露にしていた。

 

2012年大統領選挙は、今までにないほど、対決色が強い選挙になっているとアメリカのメディアは口を揃える。民主党は、オバマケアの導入や景気刺激策、そして同性婚や中絶容認など民主党はリベラル化を強め、一方の共和党は、オバマケアと景気刺激策に焦点を絞り、経済成長を妨げるとして攻撃を強めている。

 

党大会でも対決色はあらわであったが、党大会の目的は、共通してそれぞれの大統領候補者を賛美し、勝利への弾みをつけることである。 そのため、いずれの党も3つの点に注力していた。

 

1つは、バトル州の獲得である。まず、党大会が行われた場所もバトル州である。党大会を使って共和党はフロリダ州を、民主党はノースカロライナ州をとりに行ったのである。

 

共和党にとってフロリダ州は複数の人気政治家を抱え、しかも比較的裕福な高齢者も多い。大統領選挙の結果を決める代表委員の数も多いため、共和党はフロリダ州を手に入れたい。一方、民主党にとってノースカロライナ州は共和党が強い南部への入り口にあたる。2008年大統領選挙で南部の州で唯一オバマ大統領が勝利したのはノースカロライナ州とバージニア州である。民主党にとってはここでの地盤を固めようという狙いがある、といえる。

 

とにかく、党大会が行われれば、混乱はするが5万人近い観光客が押し寄せることになる。1泊50ドルのホテルが250ドル、1泊80ドル程度のホテルが400ドル以上になるのだから、党大会開催の地域への経済効果は計り知れない。

 

先の共和党大会でも後の民主党大会でも、オハイオ州、ミシガン州、ペンシルバニア州といったバトル州に呼びかける演説が多かった。ロムニー陣営は生まれ故郷のミシガン州で盛り上がり、一方オバマ陣営は自動車産業を倒産させなかったことで、ミシガン州とオハイオ州にアピールしていた。

 

2つ目は、獲得したい層へのアピールである。

両党ともに、人口比率でアフリカ系アメリカ人を超え、さらに増え続けるヒスパニック票に向けたメッセージが多かった。

 

共和党では、ロムニー候補の前に話をしたのはフロリダ州のライジングサン、キューバ系アメリカ人のマルコ・ルビオ上院議員だった。一方、メキシコ国境に近いテキサス州サンアントニオ市のメキシコ系アメリカ人のフリアン・カストロ市長が二日目に基調演説を行った。両党でも、演説の中で、スペイン語が飛び交っていた。私は1996年から党大会に参加したが、これほどまでにスペイン語が堂々と党大会で聞かれたことはない。

 

次に目を引いたのが、これも両党であるが、女性票である。共和党ではアン・ロムニー候補者夫人が、母と娘に向けたメッセージを送り、民主党では男女平等賃金法の立役者リリー・レッドベターや中絶論争で有名なサンドラ・フルークがスピーカーをした。

 

3つ目は、党大会の教育機能である。

アメリカでは選挙は、有権者が投票行動を決定できるようにする機能、つまり教育機能があると認められている。アメリカ人は2年近くかけて、国の問題と解決策、そしてその実行者チームの人柄と実力を知る。同時に、選挙は、候補者が政治家が真の政治家になっていく教育のプロセスでもある。

 

党大会は、政治家が全米デビューする機会でもある。2004年民主党大会のスピーチで、一躍有名になり2008年オバマ大統領が誕生したことは有名である。ジョージ・W・ブッシュ元大統領も1996年の党大会で司会を務め2000年大統領選挙につなげた。

 

全米で放映される党大会でスピーチが成功すれば翌日から大物政治家の位置を獲得する。

 

大舞台での若手政治家の緊張感は会場にいると痛いほど伝わってくる。大喝采を浴びた42歳の共和党のポール・ライアン副大統領候補は、演説の初めはぎこちなかった。途中で用意された水を飲んでから、滑らかになった。大舞台になれているベテランの政治家ともなると演説中に水を飲む人はほとんどいない。

そしてもう一人、ライアンと同じように水を飲んでいた人がいた。一歳年下で41歳のルビオ上院議員だ。二人とも緊張の中、大成功を収め、いまや次、または次の次の大統領候補であることは間違いない。

 

一方、民主党のプライムタイムに始めてヒスパニック系として登壇した若手のカストロ市長は、連邦議員を狙うそっくりの双子が紹介を行うことで、緊張を解いていた。

 

党大会が、選挙の結果にどんな影響を与えるのか、今後も追っていきたい。 



キャピトル・ヒル

「あれ?ヘリテージ財団なのに、民主党の党大会に行ってもいいの」

と何度も聞かれた。

 

ヘリテージ財団は、政策研究を行う政党に所属しない非営利団体、両方、行くことになんらの問題もない。保守思想の研究なので、共和党とは考え方が似ているが、共和党とは組織的には全く関係がない。

 

アジア研究所のウォルター・ローマン所長によると「民主党の党大会にもヘリテージ財団の何人かは招待されていた」という。

 

共和党側しか書いてはいけないとの誤解があるようなので、今回のニュースレターは、二つの党大会に毎日4時間座っていた中で得た知見で選挙分析を書いた。

 

それから、もう一つ、党大会で気がついたことを紹介しよう。

党大会はスピーカーにとって思った以上にシビアな場所であることだ。有名人が紹介されれば、拍手喝さいが起き、話を聞こうとするが、無名な人が登場すると会場は騒がしいまま。

そして、いったん演説が始まると、いくら有名人でもイマイチの内容の場合、会場は騒がしくなる。盛り上がりに来ているから、とりあえず、拍手はするが、聞くための静寂は訪れない。

こういった現実を体感できることは、会場の醍醐味である。

その中で、観客席の拍手と静寂を自由自在に操る大統領候補者以外の政治家は、先の共和党では、ニュージャージ州のクリス・クリスティ州知事とコンドリーサ・ライス元国務長官だ。

先週の民主党では、マサチューセッツ州の上院議員候補、エリザベス・ウォーレンと今回のVIPとして名高いクリントン元大統領だった。

演説には、静寂をもたらす中身とそして拍手喝さいにつながる積極的な話術が必要であることを痛感した。

 

日本の政治も騒がしくなっている。日本の政治家からも静寂と拍手喝さいがおとずれる演説を聞きたい。

 

※ 来週から出張のため、ニュースレターは2週間お休みします。

About the Author

Kumi Yokoe, Ph.D. Senior Visiting Fellow, Japan
Asian Studies Center