The Heritage Foundation

Japanese Newsletter #52

August 2, 2012

August 2, 2012 | Japanese Newsletter on

Olympics and Mitt Romney

共和党の大統領候補のミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事は、政治家としては珍しくBain and Companyの最高経営責任者を務めビジネスの成功体験を持っている。

アメリカの経済が一向に上を向かない現在、このことは現職のオバマ大統領陣営に危機感を生じさせている。その証拠に、オバマ陣営はロムニーの経歴を叩くネガティブ選挙に力をいれている。

CNNは7月26日、オバマ陣営がロムニー陣営を凌ぐ大金額をネガティブ選挙に投じており、オバマ陣営に何があったのか報道した。

7月14日のAP通信も、オバマ陣営のテレビ広告に注目し、ロムニー陣営の2倍の金額をテレビ広告につぎ込んでいると報じていた。

実はロムニーには、オリンピックに絡んでもうひとつ光り輝く実績がある。2002年のソルトレークシティーで行われた冬季オリンピックの組織委員の会長に急遽就任し、大会を興行的な成功に導いたことはアメリカでは周知である。

2002年ソルトレークシティー・オリンピックは1995年に開催が決定したが、選考委員の買収問題等のスキャンダルに見舞われた。1999年には組織委員会のフランク・ジョクリック会長が辞任に追い込まれ、国際オリンピック委員会(IOC)からも辞任者がでたほどだった。

そんな中、ロムニー氏は、1999年2月にオリンピック組織委員会の会長に就任した。

オリンピックは開催地域に多大な経済効果をもたらしてきた。日本は東京オリンピック以降、経済は離陸した。韓国経済もソウルオリンピック以降、飛躍的に成長しOECDに仲間入りした。

だが、近年のオリンピックでは、経済効果とセットと言えないケースもある。1996年のアトランタ・オリンピックでは1億5千万ドルの黒字が見込まれていたが、最終的には1千万ドルの黒字にとどまった。

一方、ソルトレークシティー・オリンピックは、1999年の時点で2億5千万ドルの予算不足が指摘されていた。しかも9・11同時多発テロから半年しか経っておらず、セキュリティー面で不安を抱えての開催だった。 

ロムニーの経営方針は質素倹約だった。ロムニーはまず最初に、組織委員会のワシントン事務所をK Streetから、連邦議会近くのメキシコ料理のファスト・フードと美容院に挟まれた古くて小さな場所に移転させた。K Streetはホワイトハウスから近く、有名シンクタンク、弁護士事務所、国際機関がひしめく通りだが、連邦議会近くのエリアは、治安もそれほど良くないとされ、古びた町並みだ。

ロムニーは、予算項目を「Must(必要不可欠)」と「Nice to Have(あったら良い)」の二つに分け、「Nice to Have」は全て削除するという大改革を決行した。委員会の定例食事会では、高価なディナーを用意する代わりに、ドミノピザを注文して1切れ1ドルで販売した。

スポンサーのコカコーラからは、大会へのソーダ類の無制限無償提供を取り付けただけにおさまらず、1缶25セントで販売した。削減された項目には、若者育成プログラムや文化教育プログラムなども含まれていた。

最終的にソルトレークシティー・オリンピックは、興行面でいくつかの記録を打ち立てた。国際オリンピック委員会によると、興行収支は4千万ドルの黒字、視聴者数131億人、チケットの売り上げ枚数152万枚。これらは、いずれも過去のオリンピックの最高の数字である。

ロムニーは、ソルトレークシティー・オリンピックで、彼のビジネス手法がオリンピック運営でも成功することを見せ付けた。

そして、ロムニーは共和党員でありながら民主党が強いマサチューセッツ州の知事として当選しただけではなく、手腕を発揮して財政難に陥っていた州財政を立て直した。

ロムニー夫妻は、ロンドン・オリンピックにVIPとして、開会式に登場した。大統領選挙とオリンピックの年が重なることはロムニー候補にとっては幸運といえるだろう。

こういう背景があって、オバマ陣営は2008年の大統領選挙にはない危機感を募らせている。

共和党陣営もオリンピックが進むにつれ、ロムニーへの応援に熱がはいってきているようだ。

いよいよ大統領選挙まで100日を切った。 

このニュースレターでも、大統領選挙を取り上げることは多くなる。

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キャピトルの丘

2012年の大統領選挙も、新しい選挙ツールが登場している。

今回の選挙で目を引くのは、スマート・フォン用のAPPとテキスト選挙献金である。

7月31日共和党の大統領候補やミット・ロムニー陣営は、「ミットの副大統領候補」というアイフォンとアンドロイドで使えるAPPを発表した。

ロムニーの副大統領候補は今週中にも発表されると言われており、このAPPをダウンロードしている人は、一番最初に副大統領候補を知ることになる、という。

一方、2008年にはテキスト・メッセージで副大統領候補を発表したオバマ大統領は、近日中にアイフォン用APPを発表することになっている。

2つ目は、テキスト選挙献金である。これは2010年ハイチで地震災害が起きたときに、威力を発揮したテキスト集金をしくみである。

ハイチの場合は、90999を電話番号に入力し、ハイチとテキストすると、自動的にハイチに寄付できる仕組みになっていた。

このしくみを、6月、選挙管理委員会は選挙の資金集めの方法として認めたが、一人1回につき10ドル、一ヶ月で50ドルという上限を設定した。

アメリカの大統領選挙は、金がかかり過ぎるとの批判もあるが、その一方で、新しいマーケティング手法が開発される。

一方、日本の選挙は、インターネットを使った選挙運動ですら認められていない。街宣車と朝夕の辻立ち、そして立会演説会と電話作戦などが主流の日本選挙からは新しい選挙運動は生まれない。日本の選挙は、発想も政策議論もそして相手の嘘をあばく候補者同士のやり取りに加えて報道の役割も閉ざされているようで残念に感じる。

About the Author

Kumi Yokoe, Ph.D. Senior Visiting Fellow, Japan
Asian Studies Center