The Heritage Foundation

Japanese Newsletter #41

May 17, 2012

May 17, 2012 | Japanese Newsletter on

上院の外交委員会が様変わり

先日、ヘリテージ財団の特別イベントで上院の副院内総務をつとめるジョン・カイル(Jon Kyl)が講演した。

カイル上院議員は、共和党の中でも鷹派で知られ、常に強力な軍事力を主張してきた。

カイルは、講演の冒頭で、今回の講演はリベラルを批判するだけのものではなく、むしろ、国防費削減に傾きつつある共和党保守派へに対しても苦言を呈したい、と明言し、2つのメッセージを語った。

1つ目のメッセージは、国防費削減に対する警鐘である。

カイルによると、リベラル派だけでなく最近では保守派もアメリカの世界におけるリーダーシップに関して懐疑的になりつつあり、国防費の削減に賛成する者もいる、と懸念を示した。

カイルは、国防費に無駄があることは認めつつも、アメリカは軍事力を維持するために国防費の削減を避けなければならないと主張し、現在のアメリカ財政の窮状は国防費が原因ではなく、健康保険や社会保障といった給付金制度から来ているとし、オバマ大統領を批判した。

カイルが最も強調したことは、2013年に予定されている国防費の自動削減を回避することだった。カイルによるとプライオリティがまったく設定されていない自動削減の危険性をあげ、リオン・パネッタ国防長官も自動削減は最悪と言っているほどだ、とした。

カイルは、自動削減を回避するために提出した法案を紹介した。「Down Payment to Protect National Security Act of 2012」である。この法案では、毎年削減される予定の国防費を、別の費用を削減することで相殺することを目的としている。その「別の費用」は、退職する公務員3人の補填に2人までの採用を認めること、そして2012までの予定であった公務員の給料凍結を2014年まで延長するという内容である。

2つ目のメッセージは、アメリカの世界における役割である。

カイル上院議員は「アメリカは感謝もされないのに、血を流さなければならないことに疲れている」と明言したうえで、それでも、アメリカが国際的な役割を果たすべきであることを強調し、共和党にも疲弊を理由に役割縮小を考える議員がいることを憂えた。

カイルは、「アメリカが同義的立場を明確にしないことによる悪影響は計り知れない」と強調した。そして、その例として、ソ連を「悪の帝国」と呼んだことは軍事行動を起こしてはいないが、強い影響を与えたことをあげた。

さらに、アメリカが行動を起こさなかったために、第一次世界大戦、第二次世界大戦、そして朝鮮戦争が拡大していったと、した。

アメリカの介入こそが、アメリカの国家安全保障にも世界の平和にもつながる、との信念を語り、そして、核の抑止力にも言及し、アメリカの核の傘が他国への核の拡散を防止しているとした。

カイル上院議員のような鷹派と呼ばれる議員は、日米同盟の意義を強く認める議員でもある。カイル上院議員の国防アドバイザーは、かなりの日本通でもある。

だが、カイル上院議員はこの11月の選挙には立候補せずに引退する。彼に限らず上院の外交委員会の重鎮たちは、2012年の選挙で引退する。

つまり、アメリカ議会が考えるアジアでのアメリカのプレゼンス、ひいては日米同盟の立ち居地に変化が生じる可能性がでてきた。

カイル上院議員と同様に、上院を去ることが決まっているのは、共和党で上院外交委員会のトップであるリチャード・ルーガー議員である。

ルーガー議員は、「合意」する能力でも知られる外交通である。民主党の外交リーダーであるジョン・ケリー上院議員と協力し合ってアメリカの外交を作ってきた。外交に強いことで知られるジョン・マケイン上院議員もケリー議員とルーガー議員とは協力し合う仲である。

だが、80歳という高齢と、「合意」を快く思わないティー・パーティがルーガー議員の当選を阻み、予備選挙でルーガー上位議員は、ティー・パーティが押すリチャード・マードックに敗れてしまった。

ルーガー議員の後任として外交委員会のトップになるのは、テネシー州出身のボブ・コーカーだ。

コーカー議員は、ビジネスマン出身で、ルーガー議員と同じように「合意」を導くのを得意とする。コーカー議員とルーガー議員の違いは、コーカー議員のほうが、アメリカの軍事力を外国で利用することに懸念を持っていることだと言われている。

また、もう二人の共和党上院議員が外交委員会で力を持つことになる。アイダホ出身のジェームズ・リーシュ上院議員とフロリダ出身のマルコ・ルビオ上院議員である。この二人は、カイルやマケインと同じく、強い外交を推進する鷹派として知られている。

だが、人が変われば少なからず議論の方向性は変化する。日本にとっては、共和党の外交委員会の今後の議論の方向性が気になるところである。

今後も注意深く追って行きたい。

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キャピトルの丘

先週の金曜日、昨年の7月にヘリテージ財団に入ってから、初めてヘリテージ財団のランチョン・イベントにパネリストとして登壇した。

数日前に、10分から15分話すように言われ、そして前日にはCSPANが生放送する予定である、と言われる。

私の現在の最大のコンプレックスは英語のため、金曜日13時30分にフォーラムが終わるまでの数日間、人生最大の緊張を味わうことになった。

10分から15分は、日本語でもA4で3枚から4枚の原稿が必要になる。英語でもほぼ同じだろうと仮定する。10分一人話しをするNHKの視点論点の原稿はだいたい4枚前後になるからだ。

日本にいる時だったら日本語は当然のこと、英語でもパネリストの場合原稿を用意することはなかった。

だが、アメリカ政治を知れば知るほど、原稿の必要性を痛感する。政治の基本は言葉である。言葉は人生を変えることもあれば、言葉は人のキャリアを終わらせることもある。

オバマ大統領は演説で現在の地位を勝ち取り、コンドリーザ・ライス元国務長官はフォーラムでのシャープな質問で政界への入り口を開いた。

そうかと思えば、失言のため消えていく政治関係者はアメリカにもいる。

先日、「アメリカ政治は笑いが大事」でも書いたように、オバマ大統領も例外なく演説するときは草稿を用意する。

言葉に重みが増す立場になればなるほど、不用意な発言はご法度だ。ヘリテージ財団のエド・フルナー所長も、スタッフ全員集会の演説で草稿らしき紙を手に持って壇上にあがっている。

大統領候補の指名を受ける夏の党大会では、彼らが話す原稿は話をする前に各マスコミに配られる。アメリカでは政治家が話をするとき、何も見ていないように見えても、しっかりとした原稿が用意されていると思って間違いない。

というわけで、A4で4枚の原稿を用意して、金曜日の「東日本大震災から1年 何を学ぶか」のパネルに挑んだ。

その時に、考えたことは、ヘリテージ財団に入って1週間目に受けた2時間のメディア・トレーニングだ。

その時は、簡単なテレビインタビューに答えるシチュエーションだったので伝えたいメッセージをいかに伝えるかだったが、10分から15分となると、視点論点と同じく1つのテーマでも3つの切り口は必要になる。

とにかく基本に立って原稿を書いた。

まったく読み込む時間がなかったので、手に原稿を持って登壇。とにかく緊張したが、とりあえず時間はぴったり。ところどころは原稿どおりではなく口が動くままになってしまったが、事なきを得て終了した。

課題は3点。1つはもっと早く書いて、衆知を集めること。終わってからいろんな人のコメントを聞くと、先に聞いとけば良かった、と思うことばかり。2つ目は顔をもっとあげて話す事。顔を上げられるように、読み込む時間も必要だ。そして3つ目はマックの舞台用ファンデーションを買うこと。メディアトレーニングで買うように言われていたのに、「アメリカでテレビに出ることはない」と高をくくって持っていなかった。普通の化粧では画面に耐えられない。日本でもテレビ用化粧は1時間近くかかっている。画面に映った姿を見ると、持っているべきであったと痛感した。

About the Author

Kumi Yokoe, Ph.D. Senior Visiting Fellow, Japan
Asian Studies Center