The Heritage Foundation

Japanese Newsletter #39

May 3, 2012

May 3, 2012 | Japanese Newsletter on

米政治は笑いが大事

コロラド・スプリングスで大政策合宿が開催   

4月26日、27日と一泊二日で、ヘリテージ財団が主催する「リソース・バンク」と言う名前の政策大合宿に参加した。

ヘリテージ財団と類似する考え方を持つ、シンクタンク関係者や政策関係者、政治関係者そして寄付者などがコロラド・スプリングスにある豪華リゾートホテル「ブロードムーア」に大集結した。

今回の政策合宿は35回目を数え、参加者は全米から1000人近くにものぼる。ヘリテージ財団を取り巻くアメリカ保守思想の活動家が一同に介した合宿だが、政治家の姿は、スピーカーにも参加者にもない。これは選挙のための合宿ではなく、政策のための合宿なのだ。

参加者は、交通費と宿泊代、そして会議の参加費を支払って参加する。ワシントンDCから飛行機で参加した場合、1500ドルから2000ドルが総額でかかるイベントである。

参加者には、ヘリテージ財団とよく似た立ち居地のAEIや経済政策では類似するケイトー・インスティテュート、NYの保守系シンクタンクであるマンハッタン研究所の研究員や渉外関係者らが参加していた。

初日は、朝食から始まるので、ほとんどの人が前日にホテルに入っていた。2時間の時差があり自然と早く目が覚めるので、前日入りした私は、朝食の時間に間に合うように、まずはジムに直行した。ここでは、ヘリテージのスタッフやスピーカーが汗を流していた。

朝食とともに本の展示が開始する。

そして、ランチからメインのイベントが始まる。ランチのメインはコロラド川名物のマスのクリームソースがけ。ちょっと私は苦手だったが、デザートのチーズケーキはぺろりと頂いた。食事を楽しみながら、同席した人たちと挨拶を交わす。私の隣に座ったのは、カリフォルニアの保守系シンクタンクの理事とコロラド州に住む愛国的な小説を書くという作家だった。初めてこの会に出席する人の名札には星のシールが貼ってある。とりわけ私は、ほとんど唯一のアジア人だったので、気にして話しかけてくれていた。名札の星は、一人ぽつんとしないような心遣いらしい。

開会式ランチでは、地元のコロラド・クリスチャン大学のディレクターとコロラドのシンクタンク、インディペンデンス・インスティチュートの所長が歓迎のあいさつをし、その後、ヘリテージ財団のディステンィギッシュ研究員のエドウィン・ミースらが基調講演を行い、政策合宿の幕は開けた。

その日は、ランチ以後、18時のレセプションと19時30分のディナーまでヘリテージ財団は、コロラドの街づくりイノベーションの成功例や、資金調達の方法、大学での活動例など様々なセミナーを用意し、同時に、AT&Tはソーシャル・メディアの使い方の実践ワークショップをそしてリーダーシップ・インスティチュートは広報に関する実践ワークショップを開催していた。

私は次世代の声と銘打った、ハーバード大学のビジネス・スクールの学生とスタンフォード大学のロースクールの学生、そしてコロラド大学の医学部に通う学生のセッションは特に興味深く聞いていた。

大学は往々にして保守系というよりはリベラルが多い。この3人は、その中にあってヘリテージ財団と近い保守思想を持っており、それぞれの大学で組織をつくり活動している。

彼ら3人が声を揃えたことは、シンクタンクへの要望であった。とりわけ、ヘリテージ財団の寮まで用意して全米中の大学生にインターンの機会を与えるヤングリーダーシップの制度は人気が高かった。

コロラド大学の医学生は、ヘリテージ財団のインターン経験者であった。スタンフォード大学の学生は、インターン制度に加えて、保守思想の本の無料配布も要望として付け加えていた。

質問時間に、学生新聞はリベラルが多いが、どのように折り合いをつけているのか、という質問に対し、3人とも、編集にはリベラルも保守もいるので、それほど難しくないと答え、最近の学生事情を垣間見た気がした。

夕食会の基調講演は、プリンストン大学で社会的価値について研究するロバート・ジョージ教授だった。彼は、社会保守の理論構築に大きく貢献している。

この時、私が座ったテーブルは、アトラス研究所が世界の保守系シンクタンクから招待した外国人の集まりだった。イスラエル、イギリス、スペイン、スロバキア、そしてアフリカのコートジボワールから来ていた。

ディナーが終わると、ホテルのメインビルの隣にある湖のほとりでデザート・レセプションが深夜まで行われていた。

この政策合宿は、楽しく勉強し、そして関係を深めるための2日間といえるだろう。

翌日の午前中は、クリスチャン・サイエンス・モニターの論説のゲラ・チェックをすることになっていたので、セミナーに集中することは難しかったが、全員参加の朝食セッションでは興味深い光景を見た。

最近、アメリカで開発されているシェール・ガスの採掘推奨のビデオを作ったプロデューサーへの質問で、「地震が起きないか」「周辺の住む人々に害はないのか」と質問があがり、プロデューサーは、「そうではない」と説明していた。

同じ根本思想を持っていても、新しい事象においては、その立ち位置はすぐに決まるわけではない。シンクタンクが、立ち位置をいち早く提示し、メンバーの人々はよくわからないと思えば、素直に質問をする。そんなプロセスを2日間、経験していた。

今月号で、中央公論に「会議の政治学」を書く機会があったので、4月の上旬は日本の会議とアメリカの会議の相違を整理した。この大合宿に参加して、こういった政策大合宿会議も日本にはないな、と振り返っていた。次に会議について書く機会がある時には、ぜひその意味に迫ってみたい。

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キャピトルの丘(米政治は笑いが大事)

アメリカの政治と日本の政治の大きな違いの1つは「笑い」だ。

ヘリテージ財団のエド・フルナー所長がステージにあがる時、第一声は必ずユーモアである。まずは、会場をリラックスさせ、心地よい雰囲気を作る。

ワシントンDCのシンクタンクで講演するとき、政治家も大使も研究者もつかみの「笑い」に力をいれる。

最近のワシントンDCでは日本の藤崎大使のつかみのジョークは、アメリカ人の間でも有名である。

ワシントンにいると、「笑わせる力」に威力を痛感する。

先週の土曜日に行われたワシントン名物と言えるホワイトハウス・コレスポンデント・アソシエーションの年次パーティでも、大統領にとっても「笑い」が大事であることを再確認した。

このパーティでは、大統領の笑い力が試され、30分以上の基調講演をすべて「ジョーク」で通さなければならない。

オバマ大統領の演説は強烈なギャグで出発した。

「昨年の今頃は大変だった。あの男のせいで」と言い、誰もがオサマ・ビン・ラディンの暗殺のことだと思ったら、ドナルド・トランプの顔が大画面に登場し、会場は笑いで包まれた。昨年のこの時期、トランプは、オバマ大統領はアメリカ国内で生まれていないというキャンペーンを展開していたからだ。

オバマ大統領のジョークはポリティカル・インコレクトかと思わせるぎりぎりなものもあった。オバマ大統領がインドネシアで育ったときに「犬」を食べたとの攻撃に対して、サラ・ペイリンを暗示させてジョークを作った。ペイリンの代名詞である「ホッケーママ」と「ピットブル」を比べて、「少なくとも、後者はおいしい」と笑わせた。この時、ミシェル夫人がしかめっ面していたことは広く知られている。

オバマ大統領は今までの慣習に習い、現在のスキャンダルもジョークにした。ラスベガスで豪華なフォーラムを開催したことで攻撃されている米国政府一般調達局(General Services Administration: GSA)のスキャンダルを皮肉り、「豪華なこのパーティがGSA主催でなくて安心した。」と笑わせた。最後は、現在、売春婦スキャンダルで渦中のシークレット・サービスを取り上げ「まだまだ言いたいことはあるが、シークレット・サービスを時間通りに帰さないといけないから、これで終わるよ」と笑わせながら、基調講演は終了した。

その後、登場したゲスト・コメディアンのジミー・キンメルはさらに強烈だった。この時に、アメリカの政治には「笑わせる力」に加えて「笑われる力」も重要であることに気が付いた。

ジミー・キンメルは、「私たちの大統領は本当に痩せている。北朝鮮からの食糧援助が必要なくらいだ」と笑わせたかと思ったら、会場にいる、かなり太めの共和党のホープであるニュージャージー州のクリス・クリスティ州知事をつかまえ「ミシェル夫人の肥満政策が必要なのはクリスティ知事だろう。」と笑わせ、クリスティ知事も大笑いしていた。

「笑い」にはガンを小さくなるという研究もある。とにかくアメリカの政治には、あれっというギャグもあるが、「笑い」がとても大事にされている。ちなみにオバマ大統領もジミー・キンメルも原稿を手に持っていた。それほど、この日のジョークだけで成り立つ演説は作りこまれたものなのである。

日本の政治にも、「笑い」の文化が入ってきたら、閉塞感は和らぎ、透明性は進むのではないかと思われる。政治に絡んだ「笑い」は、時として本質に迫るし、笑いを作ることは難しいからだ。二人が原稿を持っていたように、かなり勉強して伝える努力が必要になる。同時に「笑い」は関係も深める。

野田首相とオバマ大統領が、ジョークが絡みあって二人で大笑いしていたら、日米関係はかなり良くなるのではないかと思っている。

日本でもこんなパーティがあったらいいのにと思ってしまった。

About the Author

Kumi Yokoe, Ph.D. Senior Visiting Fellow, Japan
Asian Studies Center