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Japanese Newsletter #31

March 8, 2012

March 8, 2012 | Japanese Newsletter on

スーパー・チューズデー後も、予備選挙は続く               

スーパー・チューズデーが終わった。

3月6日火曜日、ジョージア州、オハイオ州、テネシー州、マサチューセッツ州など10州で共和党の予備選挙が同時に行われた。

今までの大統領選挙では、スーパー・チューズデーを終えると、だいたいの先行きが見えてきたが、今回の大統領選挙では、「予備選挙は終わらない」ということが明らかになった。

フロント・ランナーのミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事は、知事を務めたマサチューセッツでは75%にも上る得票率を記録し、圧勝した。その上、マスコミが予備選挙の山場州として注目していたオハイオ州も、最後の最後に、票差1%でリック・サントラム上院議員に競り勝った。ロムニー候補は、モルモン教が多いアイダホ州、ロン・ポール上院議員と二人しか立候補しなかったバージニア州、そしてアラスカ州とバーモント州と10州中6州で勝利し、確実に代表委員の数を積み上げた。

現在、ロムニー候補の代表委員の数は、415人、サントラム候補176人、ニュート・ギングリッチ元下院議長が105人、そしてポール候補が47人だ。

数だけ見れば、ロムニー候補が確実に足場を固めているように見える。

スーパー・チューズデーの翌日の新聞は、「勝利が分散」という分析で一致していた。サントラム候補は、テネシー州とオクラホマ州、そしてノースダコタ州で勝利をあげ、ギングリッチ候補は地元のジョージア州で白星をあげた。

つまり、スーパー・チューズデーの勝利は、ある意味、順当であり、いずれの候補者にも「大統領指名」を獲得する大金星を挙げられなかったのである。

3人の候補者の事情を見てみよう。

最初にロムニー候補。ロムニー候補は、白人労働者が多いオハイオ州で接戦を制し代表員を確実に積み上げたが、ロムニー・アレルギーが強いとされる南部の州は1つもとることが出来なかった。そのため、共和党の大票田として知られるキリスト教の価値を大事にする共和党員の票にまだまだ食い込めていないことが、スーパー・チューズデーで明らかになった。

テネシー州は、他のサウスに比べるとビジネスが多いので、ロムニー候補にも勝算はあると言われていていた。そういう背景があり、私もテネシー州で現地調査を行った。ロムニー候補もテネシー州にはある程度の力を入れ、土曜日の夜5時30分から7時までノックスビルで遊説を行った。この日、サントラムはオクラホマ州で遊説を行い、夕ご飯でテネシー州の人気リブ・レストランを家族で訪れていた。テネシー州の地元テレビはロムニーの遊説の後に、サントラムのリブ・レストランの模様を報道していた。

ある意味、最後までロムニーはテネシー州にも力を入れていた。だが、結果は、前日までの世論調査以上に差がついた。前日のUSATodayはサントラム候補が2,3%優位と報じていたが、結果は9%もの差がついていた。

ロムニーの遊説会場は、テネシーの地元テレビが「満員で盛り上がっている」と報じたように盛り上がっていた。ロムニーの演説中も、掛け声が入り、拍手が入り、ロムニーの演説と支持者は一体化しているように見えた。演説終了後も、30分近くロムニーとアン夫人は支持者と握手をしていた。

だが、支持者にインタビューしたところ「私は、ロムニーに入れると決めたわけではないの。サントラムにしようかと悩んでる。」という思いがけない言葉を聞き、テネシーの温度を痛感していた。

テネシー州には、ドライ・カウンティと呼ばれるお酒を売らない地域が数多く点在するキリスト教原理主義者が多い地域である。レストランに入ると、「日曜日は教会に行ったときにもらえる紙を持ってきた人には10%引きます」という張り紙を見かける。町を走れば数千人を収容するメガチャーチが点在する。土日ともなると、ナッシュビルやメンフィスのホテルは満員になる。聖書を持ってアメリカ中にキリスト教グループが巡礼に訪れ、ホテルのミーティングルームを借り、聖書の勉強をする。

現地でこういった状況を目の当たりにすると、南部でロムニーが勝利することは難しいと思われるが、ロムニーにとってはここで勝利をあげられれば、大統領指名に一気に弾みがつくと思われる。

続いて、サントラム候補。アイオア州の勝利と、そしてミネソタ州、コロラド州、ミズーリ州の3つの州でまさかの勝利をあげて以来、台風の眼になっている。この登場の仕方は、盛り上がる要素を持っているが、ロムニー・アレルギーの強い地域でしか、現在のところ勝利をあげていない。そのため、今、一歩、代表員の数を伸ばせないでいる。

サントラム候補が、先週のミシガン州と今週のオハイオ州のいずれかをとっていれば、新たな機動力を持てたと思われる。なぜなら、この2州は自動車産業が多く「鉄さび州」と呼ばれている。サントラムの地元であるペンシルバニア州はピッツバーグを抱え、白人労働者層からの支持を集められると思われていた。つまり、南部の州の宗教票と、白人労働者層の票を票田としていた。そのためこの2州を落としたことは、サントラム候補にとっては、ロムニーに迫るほどの熱狂的支持を集められていないことを明らかにしている。

最後に、ギングリッチ。ギングリッチ候補は地元ジョージア州でしか勝利できなかったが、これから、シークレット・サービスがつくようになった。つまり連邦政府は、候補者として認めたことになる。ギングリッチ候補は、スーパー・チューズデーの夜の演説で語ったように、サントラムがレースから降りた場合、宗教票が自分に集結することを期待している。

逆に、ギングリッチ候補がレースから降りると、2位につけるサントラム候補に宗教票が集まる可能性もある。ギングリッチはキャスティング・ボートとして存在する。

2012年共和党の予備選挙は、3月までは、州で勝利しても「勝利者が代議員を総取りできない」しくみになっている、そのため、差が付きにくい、例えば、1%で勝敗を分けたオハイオ州は、ロムニー35人、サントラムが21人の代表議員を手にし、その差は11人に過ぎない。

加えて、スーパー・パックの存在も見逃せない。今回の大統領選挙から候補者のスーパー・パックに上限なく寄付ができるようになったので、サントラムとギングリッチは、2位と3位であるとはいえ、熱狂的な支持者が莫大な寄付をして選挙を支えている。従来から、選挙資金の枯渇が選挙撤退の最大の理由である。今回の選挙では、数億円を寄付してくれる大型の寄付者が一人いれば、選挙が続けられるのである。

というわけで、ロムニー対サントラム OR ギングリッチの戦いはまだまだ続く。



編集後記 テネシー州から

これから、ミシシッピー州、ミズーリ州、カンザス州、そしてルイジアナ州と宗教色の強い州での予備選挙が続く。

今までの選挙分析を見ていると、ロムニーとサントラムでは、カソリック票では、ロムニーが先行し、プロテスタントのなかでも生まれ変わりを体験したエバンジェリカル票はサントラムが圧倒的に先行する。生まれ変わり体験のないエバンジェリカルとなると両者の差は狭くなる。サントラムはティーパーティお気に入りの候補者とマスコミに紹介されているが、投票行動分析を見ると、ティーパーティの票は、サントラムが2,3%有利に過ぎない。

投票行動の分析を見る限り、共和党予備選挙の混乱の行方は、宗教票が握っている。

私がテネシー州を周った主観では、南部の州はまだサントラムの方が強いように思われる。テネシー州を1000キロほど走ったが、サントラムのポスターは見つけたが、ロムニーのポスターを見つけることはできなかった。

土曜日にサントラム家族が立ち寄ったリブ・レストランを探して訪問したところ、2週間ほど前にロムニーも来たという。両者ともリブを食べたと言っていたが、写真の位置が、サントラムの方が目立つところにおいてあった。

キリスト教的価値が生活に入り込んでいる地域では、サントラムの社会保守のスタンスは強い。一方、ビジネスと知事の経験に基づくロムニーの経済保守のスタンスは、南部の宗教保守とっては異質なのだろう。

南部の選挙でサントラムが確実に勝利すれば、現在の代表員の数は縮まる。そうなると、ギングリッチの動向に注目が集まるだろう。

一方、ロムニーが南部の州を一つ手にすれば、予備選挙における最大の試練を乗り越えたことになる。

About the Author

Kumi Yokoe, Ph.D. Senior Visiting Fellow, Japan
Asian Studies Center